日本人の民度ってどうなんでしょ。

そういや、こういう試算がありましたね。

「若者の1%投票棄権→13万5千円損 東北大院教授試算」
http://www.asahi.com/politics/update/0720/TKY201307200009.html

今日は投票日なので、このへんのネタも投稿しておこうっと。

これ、完璧に間違ってますね。統計学的に。僕の知識はあんまりないのですが、経済学(財政学)的にも、政治学的にもどうなんでしょうね。学部生の卒論にもならない、できないと思うんだけど(原文よんでます)。ま、若者よ投票にいこうというのは間違ってないですけど。

統計学的間違い
色々ありすぎ。こういった時系列データを扱うなら、せめて階差をとりましょう。数学的仮定が崩れすぎて、推定された係数が信用できない。135,000に数学的根拠がないってことです。

ちなみに、金額は基本的に正規分布しません。これは国債の発行額でも、不動産の価格でも同じだけど、絶対に0より大きくなるからです。国債の発行額が-1000億円とかはありえません。もちろん、理屈上は平均値が1000億円で標準偏差が10億円みたない形で正規分布することは可能です(0円が発生する確率が無視できるくらい小さい)。ただし、経験上、正規分布したケースはみたことがほぼありません。株価、不動産の価格、売上、給料(年収とか)等、なんでもいいので、価格を表したデータを適当にひっぱてきてヒストグラムをかくと、大体冪乗則に従うことがわかるはずです。Amazonロングテール等がいい例です。

経済学(財政学?)的観点から
国債を発行するのは、税収と支出のバランスが損なわれている状態、というのが基本です。国の会計と家計は根本的な構造は異なりますが、足りないから、どこかから調達して埋めあわせるということは間違っていません。家計の場合は、足りない資金の調達は借入、会社の場合も出資(株式を発行)と借入です。国の場合が国債発行(増税というのもありますが)になりますが、これは意味合いが少し異なります。というのも、家計の場合、借入をして支出した場合、これは誰か(例えば隣の八百屋さん)の所得になります。これは企業の場合も同じですが、借入をおこして土地を買ったりした場合、固定資産として計上することになります。借入金という負債があれど、資産もあるわけです。この負債と資産の関係ですが、国債(円建て)を発行すると、政府予算として組み込まれ、名目はなんであれ、最終的には民間に支出されます。国の場合は国債発行= 最終的な民間全体の資産の増加という形式が存在するわけです。

前置きが長くなりましたが、この国債発行額の増加=マネーサプライ(マネーストック)の増加という原理からすると、「国債発行額が増えると問題があるんだ」ということ自体が「ん?」ということになってしまうわけです。

最後に、政治学的な観点
別に、若者の投票率が増えても、社会保障給付の問題が若者に対して有利になるわけではありません。というのも、選挙自体があくまで代議士を選ぶ手段の一つで、これは立法機関に対するジャッジということで、実際に政策を行うのは行政機関(「行政」ですから)です。若者が自分たちに有利な政策を訴えている政治家・政党を選び、若者の民意を反映させ、それらの政策が立法化・予算化されることで社会保障給付の問題等がはじめて解決に向かうということになります。では、行政立法と議員立法のどちらのほうが多いかということですが、これは下記ページで確認できます。

http://www.clb.go.jp/contents/all.html

行政立法の方が多いので、若者にとって合理的な選択はどちらということですね。

最後に言いたいのですが、ジャーナリズムは第四の権力、とも呼ばれるわけなので、こういった試算を適切に扱い、適切なところを批判することをして欲しいものです。